肉を一口食べて、ワインを含む。その瞬間、口の中で何かが変わります。肉の脂が軽くなり、ワインの渋みが丸くなる。どちらも、単体で味わったときとは違う顔をしています。

ペアリングとは、料理とワインを組み合わせることで、双方の持ち味を引き立てる考え方のこと。マリアージュ(結婚)とも呼ばれます。難しそうな言葉ですが、やっていることは単純です。足し算ではなく、掛け算になる相手を探す。

正解が一つある世界ではありません。ただ、外しにくい道筋はあります。

料理とワインが並ぶ食卓

ペアリングとは

料理とワインは、口の中で混ざります。だから、それぞれが単体でおいしいかどうかとは別の問題が起きる。

濃い料理に軽いワインを合わせると、ワインが消えます。逆に繊細な料理へ強いワインをぶつけると、料理が負ける。どちらか一方だけが目立つ組み合わせは、うまくいっていないと考えてよいと思います。

目指すのは、食べたあとにワインを飲みたくなり、飲んだあとにまた食べたくなる循環です。この往復が続くとき、その組み合わせは成功しています。

合わせる四つの視点

実際には、次の四つを見ています。

重さを揃える。 これが最も外れにくい考え方です。炭火で焼いた熟成肉のような力のある皿には、リベラ・デル・ドゥエロのような凝縮した赤を。白身魚なら軽やかな白を。皿の重量感とグラスの重量感を近づけます。

脂を酸で切る。 脂の多い料理は、口の中に膜を作ります。それを流すのが酸です。生ハム豚バラの薪火焼きに、酸のはっきりした微発泡のチャコリが効くのはこの理屈によります。

同じ方向の香りを重ねる。 薪火がまとわせる燻した香りと、樽熟成に由来するワインの香ばしさ。クリアンサ以上の熟成を経た赤が薪料理と合いやすいのは、香りの方向が揃うからです。

土地を合わせる。 同じ土地で育ったものは、たいてい合います。ガリシアの魚介リアス・バイシャスの白。カタルーニャの料理に同じ地方のワイン。長い年月をかけて、その土地の食卓が調整してきた組み合わせだからです。

「肉に赤、魚に白」はどこまで正しいか

よく言われる原則ですが、半分は正しく、半分は雑です。

赤ワインの渋み(タンニン)は、肉のたんぱく質と結びついて和らぎます。だから肉に赤が合いやすい。一方で赤に含まれる鉄分は、魚の生臭さを立たせることがある。この経験則自体には根拠があります。

ただ、料理は素材だけで決まりません。調理法とソースのほうが、しばしば強く効きます。 同じ鶏肉でも、白ワインで蒸したものと炭火で焼いたものでは、合わせるべき相手が変わる。タコをパプリカで仕上げた一皿なら、白よりも軽めの赤やロサードが寄り添うこともあります。

色ではなく、重さと香りで考える。そのほうが応用が利きます。

料理との相性、迷ったときは

薪で焼いた料理は、火を通す過程で香りをまといます。熾火の温度や薪の樹種によって、その香りは変わる。ですからペアリングでは、素材よりも「どう焼いたか」を先に見ることになります。

迷ったときの目安を挙げるなら、三つ。強く焼いた肉には、熟成した赤。タパスを何品か並べるなら、料理を選ばないロサードや泡。食後のデザートには、甘口を少しだけ。

もう一つ、実際に効く方法があります。同じ土地のものを選ぶ。 産地が重なれば、大きく外すことはまずありません。原産地呼称を手がかりにすると、その土地の組み合わせが見えてきます。

グラスの温度でも印象は変わりますから、同じワインでも出し方次第で相性は動きます。正解を暗記するより、その変化を面白がるほうが長く楽しめる。ほかのワインの話はコラム一覧からどうぞ。