スペインと聞いて、白ワインを思い浮かべる人は少ないはずです。テンプラニーリョの赤、リベラ・デル・ドゥエロの力強い一本——この国のワインは、たいてい赤い顔で語られます。
その常識の外側に、リアス・バイシャス(Rías Baixas)があります。スペイン北西部ガリシア地方の白ワインの銘醸地。赤が主役のこの国で、爽やかで香り高い白の産地として国際的な人気を勝ち取ってしまった土地です。
なぜここだけ白なのか。答えは、天気にあります。

産地の特徴 ― 大西洋と雨
「リアス・バイシャス」とは、入り組んだ入り江(リアス式海岸)のこと。名前がすでに、海を指しています。
大西洋に面したこの地は、スペインでは珍しく雨が多く、冷涼で、緑が濃い。乾いた大地と強い日差しという、アンダルシアあたりで思い描くスペイン像は、ここには当てはまりません。海からの潮風とミネラルが、ワインに独特の爽やかさを与えます。
そして雨は、造り手にとってはやや厄介です。湿気はぶどうの敵。だからこの土地では、ぶどうを高い棚(ペルゴラ)に這わせて育てます。地面から離し、風を通す。栽培法そのものが、天気への返答になっているわけです。
主役の品種 アルバリーニョ
リアス・バイシャスの主役は、白ぶどうのアルバリーニョです。
桃、柑橘、白い花。香りは華やかに立ちのぼるのに、口に入れるといきいきとした酸が背筋を通していて、最後にわずかな塩気が残る。この「塩気を感じるミネラル」が、この品種の名刺のようなものです。
海のそばで育ったぶどうが、海の味を思わせる。ぶどうが土地の性格を引き受けるという話は、ここでは比喩ではなくなります。

味わい
グラスに注ぐと、香りが先に来ます。フレッシュでアロマティック。口に含めばシャープな酸とミネラルが通り抜け、後味はすっきり引いていく。
冷やして楽しむのに最適な、軽やかで上品な白。ただし冷やしすぎは損です。温度でワインの表情は変わるので、香りが閉じない程度に留めるのがちょうどいい。グラスの形も、この香りを受け止められるものを選びたいところです。
魚介との相性
相性の話は、ほとんど答えが出ています。海のワインには、海のものを。
同じガリシアのタコ料理、薪火で焼いた魚、白身魚、海の幸、小イカ。タパスをつまみながらでも、パエリアの横に置いても成立します。
同じ国のワインなのに、向き合う皿がここまで違う。産地を知ることは、合わせる料理を知ることでもある。 ほかのワインや産地は、スペインのワインやコラム一覧からご覧いただけます。