木の皿の上に、ぶつ切りのタコ。オイルがかかり、赤い粉がふられ、粗塩がのっている。ソースもなく、飾りもない。

タコのガリシア風、スペイン語で「プルポ・ア・ラ・ガジェガ(Pulpo a la gallega)」は、スペイン北西部ガリシア地方を代表するタコ料理です。やわらかくゆでたタコに、オリーブオイルとパプリカ、塩をふるだけ。

引き算しかしていないのに、土地の名物として愛され続けている。素材が良ければ手数は要らない——その主張を一皿で押し通す料理です。

ゆでたタコ

プルポ・ア・ラ・ガジェガとは

大西洋に面したガリシアは、良質な魚介の宝庫。マリスコスの豊かさで知られる土地です。なかでもタコは名物で、お祭りや市(フェリア)の屋台料理として親しまれてきました。格式の高い皿ではないのです。

ゆでたタコをはさみで一口大に切り、木の皿に盛る。包丁でもなく、陶器でもない。祭りの流儀が、そのまま伝統的なスタイルとして残っています。

味つけのポイント

味つけに使うのは三つ。オリーブオイルパプリカパウダー(ピメントン)、粗塩。以上です。

三つしかないので、逃げ場もありません。良質なオリーブオイルかどうかが、そのまま味を決める。ピメントンも、甘みのあるものとほんのり辛いものを使い分けるのが腕の見せどころ。塩ひとつで料理が変わるという言葉の意味が、この皿ではよく分かります。

なお、ゆでたじゃがいもを下に敷くこともあります。落ちたオイルの行き先が、ちゃんと用意されている。

やわらかくゆでるコツ

勝負は、やわらかくゆでられるか。ここ一点です。味つけで取り返せる工程が存在しませんから。

伝統的には銅鍋で丁寧にゆでます。そして「タコを驚かせる」ように熱湯へ三度くぐらせてからゆでる、という所作。理屈より先に、手つきが受け継がれてきました。近年は冷凍して繊維をほぐす方法も一般的です。

火加減の緩急を読む神経は、鉄板で焼くプランチャ小イカのソテーと変わりません。

ワインとの相性

同じ土地の海が育てた白ワイン(リアス・バイシャス)——これ以上の相棒はありません。爽やかな酸とミネラルが、タコの甘みを持ち上げます。微発泡のチャコリ、あるいはロゼも好相性。

塩とオイルで足りる。そう言い切れる素材が手元にあるかどうか。ガリシアの海は、その条件を満たしてしまいました。

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