地下の通路に、瓶が横たえて積まれています。ラベルはまだ貼られていない。栓の下で、目に見えない変化がゆっくり進んでいます。

カバの格付けとは、瓶詰めしてから澱とともに寝かせた期間の長さによって、呼び名が段階的に分かれる仕組みのこと。長く寝かせたものほど、上の呼称を名乗れます。

この場合の熟成は、蔵での話です。買ってから寝かせるのとは意味が違います。

セラーに寝かされた瓶

澱と一緒に寝かせるということ

まず前提として、カバは瓶内二次発酵という製法で造られます。瓶の中で二度目の発酵を起こし、そこで生まれた炭酸ガスが泡になる。

発酵を終えた酵母は、役目を終えて死にます。これが澱として瓶の底に沈む。ここからが本題です。

澱をすぐ取り除かず、そのまま置いておくと、酵母の細胞が少しずつ分解し、内容物がワインに溶け出します。この過程を経ると、焼いたパンやビスケット、ナッツを思わせる香りが生まれる。同時に、泡の粒が細かくなり、口当たりが滑らかになります。

時間を買っている、という表現がいちばん近い。 蔵は瓶を寝かせている間、売上を得られません。その分が価格に乗ります。

期間で分かれる呼び名

寝かせる期間には段階が設けられており、短いものから順に、標準のもの、レゼルバ、グラン・レゼルバと名前が変わっていきます。

最も短い段階のものは、果実の香りが前に出た、軽快な仕上がりです。食前に冷やして一杯、という使い方が向きます。

レゼルバの段階になると、澱由来の香りが乗り始めます。果実だけでなく、パンの皮のような香ばしさが顔を出す。泡も落ち着き、当たりが柔らかくなります。

グラン・レゼルバは、さらに長い年月を経たものです。色は麦わらから黄金へ寄り、香りにはナッツや蜂蜜のニュアンスが現れる。泡は極めて細かく、飲み口はもはや発泡ワインというより、泡を持った熟成白ワインに近づきます。

このほか、より厳しい条件を課した上位区分も存在します。畑の管理や収穫年の表示まで含めて規定するもので、原産地呼称の枠組みが年々細かくなっている流れの一部です。

選ぶときの目安

どれを選ぶかは、飲む場面で決まります。

食前の一杯、あるいは大勢で気軽に開けるなら、短い熟成のもので十分です。むしろそのほうが軽快で、場に合う。

食事に合わせるなら、レゼルバ以上を。香りに厚みが出るぶん、料理と正面から向き合えます。

贈り物として選ぶなら、グラン・レゼルバは説得力のある選択です。同じ価格帯の他国の泡と比べたとき、熟成の長さで優位に立ちやすい。この背景には、産地の規模と輸入の事情も絡んでいます。生産の中心であるペネデスは、量と質の両立に強い土地です。

なお、買ってから何年も寝かせる必要はありません。熟成のポテンシャルという考え方は、この手の泡にはあまり当てはまらない。蔵がすでに時間を使い終えているからです。

料理との相性

短い熟成のカバは、揚げものと軽い塩気に向きます。クロケッタカラマリパタタス・ブラバスアセイトゥナスタパスを並べる卓で、最初の一杯として。

レゼルバ以上になると、守備範囲が広がります。イベリコ豚の生ハム腸詰めの脂を切りつつ、香ばしさで受け止められる。焼き野菜エスカリバーダのような、火の香りをまとった皿とも噛み合います。

グラン・レゼルバなら、薪火で焼いた魚帆立熟成チーズにも耐えます。地元のカタルーニャ料理と合わせれば、土地が揃うぶん外しません。

冷やしすぎに注意。出す温度を少し上げ、細すぎないグラスを選ぶだけで、長い熟成の成果が見えてきます。ほかのワインの話はコラム一覧からどうぞ。