乳を発酵させ、時間をかける。ぶどうを発酵させ、時間をかける。やっていることがここまで似ている食品は、そうそうありません。ワインとチーズが「もっとも自然な組み合わせ」と呼ばれてきたのは、味の偶然ではなく、成り立ちが親戚だからです。

とはいえ、どれとどれでも合うわけではない。強すぎるチーズが繊細なワインを踏み潰す、という事故は普通に起きます。ただ、覚えることは意外と少ない。原則は二つだけです。

チーズと赤ワイン

相性の二つの原則

ひとつめは、「同じ土地のもの同士は合う」。

理屈は単純です。同じ地域で育ったワインとチーズは、同じ気候、同じ牧草、同じ食卓のなかで隣り合って育ってきました。何百年も同じ皿に載っていたものが合わないほうが不思議、というだけの話。スペインのチーズが土地ごとに顔を変えるのと同じ理由で、ワインの原産地呼称も土地を守っています。産地を揃えるだけで、大外しはほぼ消えます。

ふたつめは、「味わいの強さを合わせる」。

繊細なチーズには軽やかなワイン、濃厚で熟成したチーズには力強いワイン。どちらかが押し負けた瞬間に、両方の魅力が消えます。強さの釣り合いは、相性の話というより力比べの話です。

白ワインとチーズ

白ワインの武器は、酸です。

フレッシュチーズや山羊のチーズ(シェーヴル)のような、若く尖った味には、この酸が並走します。モッツァレラのミルキーな甘さも、クリーミーな白カビの脂も、酸のある白があればしつこくならない。リアス・バイシャスの白や、微発泡のチャコリあたりが得意な領域です。よく冷やすこと。サーブの温度を外すと、頼りの酸が鈍ります。

チーズの盛り合わせ

赤ワインとチーズ

赤の相手は、時間をかけたチーズです。

テンプラニーリョのような果実味のある赤は、ハードタイプの熟成チーズと噛み合います。羊乳のマンチェゴのように、乾いて塩気の詰まったチーズを思い浮かべてください。

さらに熟成が進んで、うまみが濃く重くなったチーズ。ここまで来ると軽い赤では受け止めきれないので、リオハやリベラ・デル・ドゥエロ熟成した赤を持ってきます。年月をかけたもの同士をぶつける。これがいちばん失敗しません。

スパークリング・甘口との組み合わせ

ここからは、少し裏をかく組み合わせの話です。

まず、泡。カバなどスパークリングワインのきめ細かな泡は、クリーミーなチーズの脂を洗い流して、後味を切り上げてくれます。同じ強さで並ぶのではなく、片方が掃除役に回るという合わせ方。

そして、甘口。ブルーチーズのような塩気と刺激の強いチーズに、甘いワインを持ってくる。字面だけ見れば無茶ですが、これが驚くほど噛み合います。塩と甘さが互いを押し上げるのは、トゥロンを生ハムの隣に置いたときと同じ現象です。定石を一度外したところに、いちばん記憶に残る一口がある。

盛り合わせのコツ

コツは、ひとつだけ。性格をばらけさせることです。

同じ系統を三つ並べても、食べ比べは起きません。ハードタイプ、白カビ、青カビ、山羊。方向の違うものを少量ずつ。そうすると、一本のワインが相手によって表情を変えていくのが手元でわかります。ペアリングを覚えるのに、これ以上効率のいい方法はない。

あとは、イベリコ豚の生ハムオリーブの実ナッツやドライフルーツを添えるだけ。それだけで一皿として立ちます。冷えたスペインのワインを一本抜いて、時間をかけて減らしていく。急ぐ理由が、この組み合わせには何もありません。

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