コロッケだと思って口に入れると、少し驚きます。ほくほくしていないのです。衣の内側から出てくるのは、とろりと濃厚なクリーム。
クロケッタ(Croqueta)とは、なめらかなベシャメルソースを主体に具材を混ぜて成形し、パン粉をつけて揚げたスペインのコロッケ。バルの定番タパスであり、家庭料理の代表格でもある、スペインの「おふくろの味」です。
特徴、代表的な具材、日本のコロッケとの違い、そして楽しみ方まで。ひと口の中身を開けてみましょう。

クロケッタとは
日本のコロッケの主役は、じゃがいも。スペインのクロケッタの主役は、ベシャメル(ホワイトソース)。ここが決定的に違います。
牛乳とバター、小麦粉で作った濃厚なソースに具材のうまみを移し、冷やし固めてから成形して揚げる。とろけるものを、いったん固めて、また熱でとろかす。外はサクッと、中はクリーミー。衣一枚で勝負するカラマリとは正反対で、こちらは中身の流動性が勝負どころです。
代表的な具材
王道は、生ハムを刻んで加えた「クロケッタ・デ・ハモン」。塩気と脂の甘みが、白いクリームの中で際立ちます。
ほかにも、鶏肉、きのこ、干し鱈(バカラオ)、青カビチーズ。共通点は、どれも味が濃いこと。穏やかな器に、はっきりした味を移す料理なのです。
前日の煮込みの残りを使うこともあります。コシードの翌日がクロケッタになる。だから家庭ごとに味が違う。台所の事情から生まれた一品です。
タパスとしてのクロケッタ
小皿料理の花形。立ち飲みのカウンターでいくつか頼み、仲間と分け合う。それがこの料理の正しい姿です。
合わせるのは、キリッと冷えた白ワインかスパークリング。熱々に冷えた酸を通すと、脂が流れて後味が軽くなる。温度で表情を変えるのがワインですから、ここはしっかり冷やしたい。
小さくて、素朴で、どこでも愛されている。スペインの食文化に入る扉としては、これほど親切な一皿もありません。ほかの料理は、パエリアやコラム一覧からご覧いただけます。