まず、見た目で驚かれます。渦を巻いた房が塔のように積み上がった、緑がかった黄色の野菜。ロマネスコです。装飾品のようにも見えますが、これを薪火の脇に置きます。

出てくるのは、まるで別のものです。水分が抜けて甘みが締まり、房の先には香ばしい焦げ目。付け合わせのつもりで頼んだ客が、皿の順番を間違えたかと思う——野菜が主役に回るのは、こういう瞬間です。

季節野菜のグリルとは、その時季にもっとも味の乗った野菜を、薪の炎と熾火で焼き上げる料理。以下、なぜ火を通すと野菜が正直になるのかを見ていきます。

ロマネスコの渦巻き状の房

ロマネスコとは

正体は、ブロッコリーやカリフラワーの親戚。同じアブラナ科です。あの奇妙な造形はフラクタル(自己相似形)と呼ばれ、小さな房が全体と同じ形を繰り返しています。色は淡い黄緑。

味はといえば、ブロッコリーより繊細です。カリフラワーに近いほのかな甘みがあって、そこにナッツを思わせる香りが重なる。原産はイタリア・ローマ周辺とされ、名前もそのまま「ローマの(romanesco)」から来ているといわれます。

観賞用として飾られることもあるほどの見た目ですが、この野菜の本番は火のなかです。加熱すると甘みが増し、グリルや蒸し料理でよく応えてくれます。

薪火とグリル野菜の歴史

野菜を炎で焼く。技法としてはこれ以上さかのぼれないほど古く、人類が火を使い始めた頃からある手つきです。肉や魚を焼いたあとの残り火で、傍らの野菜も一緒に焼いておく。もったいないから、という程度の動機だったはずです。それが薪料理のグリル野菜の原型になったと考えられています。

面白いのは、この「ついで」が近年になって逆転したことです。薪火を扱うレストランが世界的に増えるなかで、野菜そのものを主役に据えるグリルが注目されはじめました。炭火と薪火の使い分けを野菜のために考える料理人がいる。残り火の恩恵にあずかっていた側が、いつのまにか火の本命になっている。

薪火グリルの特徴

火のなかで、野菜には三つのことが起きています。

水分の蒸発と甘みの凝縮 ― 熱にさらされて水分が飛び、そのぶん糖分とうま味が濃くなります。ロマネスコのような房状の野菜だと、外側はカリッと、内側はホクホク。同じ一片のなかに二つの食感が同居します。

香ばしさとスモーキーな風味 ― 炎と熾火の熱、そして煙。これが表面に触れて焦げ目と燻した香りを置いていきます。薪火の香りが移る仕組みは、蒸す・茹でるでは絶対に再現できません。ここが分かれ目です。

素材の甘みを引き立てる油 ― 焼く前後にスペインのオリーブオイルをまとわせると、散らばった香りがひとつにまとまり、口当たりもなめらかになる。良質なオイルは、じつは肉より野菜のグリルでこそ働くといわれます。

炎の脇でじっくり火が入る野菜

味わいのポイントと調理のコツ

ロマネスコの房は、見た目のとおり火が通りにくい。そこで、あらかじめ軽く下茹でしてから薪火で仕上げる手が使われます。外は香ばしく、中はしっとり。対比を狙って火を二段に分ける、というやり方です。

そして、コツはひとつだけ。炎を見るのをやめることです。

見るべきは熾火の量と、食材との距離。強すぎる直火に置けば表面だけが黒くなって、中は生のまま終わります。じっくり熱を入れてやれば、野菜は勝手に甘くなる。あとは仕上げに岩塩とオリーブオイルをひとまわし。それで足ります。手を加えないほうが強い一皿というのは、確かにあります。

季節野菜とバリエーション

ロマネスコの旬は、冬から早春。ただしこの料理は、主役を差し替えれば一年もちます。

春はアスパラガスや新玉ねぎ。夏はパプリカやズッキーニ。秋はきのこ類やかぼちゃ。季節でコースが変わるのは気分の問題ではなく、火の入れ方まで替わるからです。同じグリルという名前で、中身は毎回別の料理になっている。

やっていることは、パン・コン・トマテと地続きです。素材が良ければ、余計なことはしない。

料理・ワインとの相性

香ばしさとほろ苦さ。この二つを抱えた皿には、果実味と酸のバランスが取れたワインが向きます。白ならチャコリの爽やかさ、赤なら軽やかなガルナッチャ。どちらも焦げ目の香ばしさを押しのけず、野菜の甘みの側に寄ってくれます。

もっとも、単品で完結させなくてもいい。イベリコ豚の生ハムの塩気を隣に置けば、野菜の甘さが急に前へ出てきます。付け合わせに戻すのではなく、対等な相手として並べる。そうすると、この一皿がどれだけ饒舌かがよくわかります。

そのほかの料理やテーマについては、コラム一覧からご覧いただけます。