冷えたグラスに注ぐと、緑がかった淡い黄色。香りを取ると、まず柑橘、そこにハーブと青草。飲み込んだあと、舌の奥にわずかな苦みが残ります。
これがベルデホです。スペイン中北部の高原で育つ白ぶどうで、いまやスペインの白ワインを代表する品種のひとつ。
魅力の中心にあるのは、この後味の苦み。慣れないと戸惑うかもしれませんが、これがなければベルデホはただの爽やかな白で終わります。

ベルデホとは
名前は「緑がかった」を意味します。実際、房も、できあがったワインの色も、緑を帯びている。
主産地はルエダ。標高七百メートルを超える高原で、カスティーリャの乾いた大地の一角です。夏の昼は強い陽射しで気温が上がり、夜は驚くほど冷える。この寒暖差が、香りの成分と酸を同時に保たせます。
土壌は石が多く、水はけがいい。痩せていて、根は深く伸びる。灌漑に頼らず育つ古い樹も残っています。
暑い国の白ぶどうが往々にして酸を失うなか、この品種が張りのある酸を保てるのは、標高と夜の冷え込みのおかげです。
夜に摘む理由
ベルデホの収穫は、しばしば夜に行われます。日が落ちて気温が下がってから、機械や人手で摘む。
理由は二つ。ひとつは、酸化を防ぐため。この品種は香りの成分が酸化しやすく、日中の高温下で摘むと、蔵へ運ぶまでのあいだに香りが失われていく。もうひとつは、ぶどうを冷えた状態で仕込みに入れるため。低い温度で搾ることで、繊細な香りが液体に残ります。
香りが命の品種だから、香りを守る手順が組まれている。理屈は単純です。
味わいと、造り方による違い
香りの中心は柑橘とハーブです。グレープフルーツ、ライム、フェンネルや刈った草を思わせる青い香り。品種によっては桃や白い花の印象も出ます。
そして後味の苦み。これはアーモンドの皮や柑橘のわたに近い質のもので、味を締める働きをします。酸だけでは出ない骨格が、この苦みで立ち上がる。料理と合わせたときに強いのは、この構造のおかげです。
造り方の幅もあります。ステンレスタンクで低温発酵させ、若いうちに瓶詰めしたものが主流。みずみずしく、香りがまっすぐ出ます。一方で、発酵後に澱と接触させて厚みを出したものや、樽を使ったものもあり、こちらはナッツのような香ばしさと粘性が加わる。
他の白と比べるなら、リアス・バイシャスのアルバリーニョが塩気と酸で海に寄り添うのに対し、ベルデホは香りと苦みで料理を締める。マカベオの穏やかさとも、チャコリの鋭い酸とも違う立ち位置です。カバのブレンドとはまた別の設計思想と言っていい。
料理との相性
苦みのある白は、苦みのある野菜と合います。アーティチョーク、白アスパラガス、ピミエントス・デ・パドロン。通常はワインを選ぶ食材ですが、ベルデホは正面から受け止めます。同じ方向の味を重ねる合わせ方です。
ハーブの香りが立つので、パセリを使った料理やニンニクを効かせた皿にもいい。ガンバス・アル・アヒージョ、きのこのアヒージョ。酸と苦みが油を切ります。
魚介なら、アサリやメルルーサ、ドラーダの塩釜焼き。アンチョビの酢漬けやエスカベチェといった酢を使った料理にも負けません。
揚げ物との相性も良好です。カラマリやクロケッタ、バルの立ち飲みで並ぶ小皿全般。タパスをいろいろ頼むときの一本として、頼りになります。
チーズなら、羊乳のマンチェゴのような塩気のあるものと。温度は冷やしすぎないほうがいい。八度を下回ると、せっかくの香りが閉じます。合わせ方の考え方はペアリングの基本に。ほかの品種の話はコラム一覧からどうぞ。