木の板が運ばれてきます。上には四つ、五つのチーズ。手前に白っぽく柔らかいもの、奥に硬く色づいたもの。隙間に蜂蜜、ナッツ、薄いパン。どこから手をつけるか、少し迷います。
チーズプレート(タブラ・デ・ケソス)とは、数種類のチーズを一枚の板に盛り合わせた供し方のこと。スペインではバルのカウンターから食後の席まで、幅広く出てきます。
並べ方には、理由があります。

何種類を、どう選ぶか
三種から五種。これが扱いやすい範囲です。少なすぎると比べる面白みが出ず、多すぎると舌が疲れます。
選ぶときの軸は、重ならないようにすること。乳の種類(牛・羊・山羊)を分ける。熟成期間を分ける。質感を分ける。この三つのうち、どれかで差をつければ、板の上に幅が出ます。
スペインのチーズなら、選択肢には困りません。羊乳のマンチェゴ、青カビのカブラレス、スプーンですくうトルタ、燻したイディアサバル、島のマオン。性格がまったく違うので、四つ選べばそれだけで構成になります。
産地を揃えるという組み方もあります。 同じ地方のチーズだけで板を作ると、その土地の乳と気候が見えてきます。
並べる順番と食べる順番
盛りつけは、時計回りに軽いものから重いものへ。これが基本です。
食べる順番も同じ。柔らかく若いチーズから始め、熟成の進んだもの、最後に青カビへ。逆にすると、強い風味が舌に残って、そのあとの繊細なものが分からなくなります。
切り方にも決まりがあります。円形のものは扇形に、四角いものは細長く。どの一切れにも、外側の皮と中心の部分が入るように切る。熟成のグラデーションを一口で味わうためです。
温度も忘れずに。冷蔵庫から出したてでは香りが閉じています。三十分ほど置いてから出す。ワインを温度で扱うのと、考え方は同じです。
付け合わせが果たす役割
板の隙間に置かれるものには、それぞれ仕事があります。
蜂蜜は、塩気と青カビの刺激を丸めます。とくにカブラレスのような強いチーズには効く。ナッツは食感の変化と、脂の質を近づける役目。果物やドライフルーツは、甘みで塩を受け止めます。
パンは、ピコスのような硬く小さいものが使いやすい。味が主張せず、口の中をいったん整えてくれます。
つまり付け合わせは、飾りではなく調整装置です。強すぎるチーズを飲み込みやすくし、次の一切れへ移る橋をかける。
料理との相性、そしてワイン
ワインを一本で通すなら、ロサードか軽めの赤が無難です。板の上の幅に、ある程度まで付き合ってくれます。
種類ごとに変えるなら、順に動かします。若く柔らかいチーズには酸のある白。チャコリのような軽い一杯でも十分です。羊乳の熟成したものには、テンプラニーリョの赤やクリアンサを。青カビには、甘口。シェリーの甘口タイプが合わせやすく、塩気と甘みが噛み合います。
発酵どうしの相性を突き詰めると、産地を揃える形に落ち着くことが多い。ペアリングの考え方でいう「土地を合わせる」です。
板は、食後に居座る時間にもよく馴染みます。デザートの代わりに一枚、というのも悪くない選択です。ほかのワインの話はコラム一覧からどうぞ。