テーブルの端に、小ぶりのグラスが並んでいきます。皿が替わるたびに、注がれる中身も替わる。飲み干した頃には、最初の白のことをもう思い出せないくらい、遠くまで来ています。

ペアリングセットとは、コースの皿ごとに異なるワインを少量ずつ合わせて出す形式のこと。ワインペアリング、マリダヘとも呼ばれます。

一本を決めなくていい。それが、この形式のいちばんの利点です。

並べられたワイングラス

ペアリングセットとは

通常、ボトルを一本頼めば、その日はそのワインで通すことになります。前菜から肉料理まで、同じ一杯で。

セットはこれをやめます。皿ごとに、その皿のための一杯を出す。量は一皿あたり六十から八十ミリリットル程度が一般的で、五皿六皿と続いてもボトル一本分ほどに収まります。

利点は二つ。まず、それぞれの皿に最適な相手を当てられること。もう一つは、普段なら一本を空ける勇気が出ないワインにも触れられることです。

飲み比べにもなります。同じテンプラニーリョでも産地が違えばどうなるか、熟成の長さで何が変わるか。並べて飲むと、違いがはっきりします。

組み立ての順序

出す順番には、決まった流れがあります。

軽いものから重いものへ。 泡か軽い白から始め、白、ロサード、軽い赤、重い赤、最後に甘口。逆に進むと、前の一杯の余韻が次を潰してしまいます。

冷たいものから、温度の高いものへ。 これは料理の流れとも重なります。冷製の前菜から、火の入った皿へ。ワインの適温も、それに沿って上がっていく。

辛口から甘口へ。 甘みは舌に長く残ります。途中に入れると、後の辛口が痩せて感じられる。

料理の側の順序も、同じ考え方で組まれています。コースが季節ごとに変わるなら、合わせるワインも動く。組み立てとは、二つの流れを重ねる作業です。

一本を通すのとの違い

セットが常に優れているわけではありません。

一本を通す良さは、変化を味わえることにあります。抜栓してから時間が経つと、ワインは開いていく。同じボトルの一杯目と最後の一杯は、別物と言っていいほど違うことがある。グラスの形によっても、その変化の速さは変わります。

セットでは、この時間の経過を追えません。それぞれが最適な状態で出てくるかわりに、一本と長く付き合う体験は諦めることになります。

だから、使い分けです。じっくり飲みたい日は一本を。皿数の多い日や、いろいろ試したい日はセットを。タペオのように店を渡り歩く夜も、考え方としては近いかもしれません。

料理との相性

具体的に組むなら、こんな流れになります。

冷たい前菜、たとえばガスパチョボケロネスには、酸の立った白かチャコリ。魚介や白身魚へ進んだら、少し厚みのある白へ。

焼いた野菜きのこのあたりで、軽い赤に切り替える。ガルナッチャが入りやすい位置です。そこからイベリコ豚炭火の熟成肉へ向かうにつれ、赤も力のあるものに替えていく。

締めのデザートには甘口を少量。チーズの板を挟むなら、その手前が収まりのいい位置です。

順番が味を作る。当店でも、皿の流れに沿ってグラスを組み立てています。ほかのワインの話はコラム一覧からどうぞ。