同じ産地、同じ造り手、同じ畑。違うのは収穫年だけ。それでも味が変わります。ぶどうは農産物ですから、その年の天候をそのまま抱え込む。

ヴィンテージチャート(アニャーダの評価表)とは、産地ごとに収穫年の出来を採点し、一覧にまとめたもののこと。「優」「良」「並」といった段階で示されるのが一般的です。

当たり年という言葉は、ここから来ています。

収穫期のぶどう畑

アニャーダとは

アニャーダは、収穫年のこと。日本語ではヴィンテージと呼ばれることが多い言葉です。ラベルに記された四桁の数字が、それにあたります。

ワインの原料はぶどうだけです。だから、その年に何が起きたかが、味に直結する。春の霜、夏の日照、収穫直前の雨。どれか一つが極端に振れれば、そのぶどうから造られるワインの性格は変わります。

スペインでは、多くの原産地呼称がその年の評価を公表しています。管理機関が収穫されたぶどうの状態を確認し、段階で示す。ラベルの裏に評価が刷られていることもあります。

当たり年をつくる条件

評価が高くなる年には、共通した傾向があります。

生育期に十分な日照があり、実が完熟すること。それでいて、昼夜の寒暖差が保たれ、酸が落ちきらないこと。そして収穫の直前に、まとまった雨が降らないこと。

雨が味を薄めるのは、ぶどうが水を吸って果汁が薄まるためです。加えて、湿気は病気を呼ぶ。だから乾いた収穫期は歓迎されます。リオハリベラ・デル・ドゥエロのように寒暖差の大きい産地では、この条件が揃った年に凝縮した赤が生まれます。

逆に言えば、産地の性格によって「良い天候」の中身は違う。冷涼で雨の多いリアス・バイシャスにとっての好条件と、乾いた急斜面の産地にとっての好条件は、同じではありません。だからチャートは産地ごとに作られます。

チャートとの付き合い方

便利な指標ですが、扱いには注意が要ります。

第一に、評価は産地全体の平均です。同じ年でも、畑の位置や収穫の判断で結果は大きく分かれる。難しい年に良い一本を仕上げる造り手はいますし、その逆もあります。

第二に、評価は若いうちの品質を見ているとは限りません。長期熟成に向く年と、早く飲んでおいしい年は別のものです。クリアンサやレセルバといった熟成区分と組み合わせて考えるほうが実用的でしょう。

第三に、年号のないワインもあります。カバシェリーのように、複数年を組み合わせて味を安定させる造り方では、チャートの出番はありません。ベルモットも同様です。

チャートは、外れを避けるための目安。 当たりを引くための道具ではない、と考えておくと気が楽になります。実際に飲むときは、温度やグラスのほうが印象を左右することも多い。

料理との相性

年の性格が読めると、合わせ方も変わってきます。

日照に恵まれ凝縮した年の赤は、力のある皿に向きます。炭火で焼いた熟成肉骨付きのチュレトン長く煮込んだ牛テール。ワインが強いぶん、料理も引かない。

冷涼な年の赤は、酸が立って軽やかになります。こちらはきのこ焼いた野菜といった皿と釣り合う。白の当たり年も同じで、酸が保たれた年ほど魚介に寄り添います。

結局のところ、年号は情報の一つにすぎません。重さと香りを見て合わせるペアリングの基本は変わらない。数字に振り回されず、目の前の一杯を測る。そのほうが確実です。ほかのワインの話はコラム一覧からどうぞ。