米袋を手に取ると、意外に小さな粒が入っています。丸くて、短くて、日本の米に少し似ている。けれど鍋に入れると、まるで違う振る舞いをします。

ボンバ(Bomba)とは、スペイン東部で栽培される短粒米の品種名。パエリアをはじめとする米料理に使われる、いわば専用米です。名前は「爆弾」を意味しますが、これは加熱すると膨らむ様子から来ていると言われます。

高い。それでも作り手が選ぶのは、この米にしかできないことがあるからです。

だしを吸って炊き上がった米料理

ボンバ米とは

短粒種で、粒は丸みを帯びています。生の状態では、日本のうるち米と見分けがつきにくいほど。

決定的な違いは、加熱したときの挙動にあります。ボンバは水分を吸うと、縦ではなく横に膨らむ。粒の中心まで液体が入っていきながら、外側の構造は保たれる。だから、だしをたっぷり吸わせても形が残るのです。

日本の米は炊くと粘りが出ます。デンプンが表面に出て、粒どうしがくっつく。パエリアではこれが困る。一粒ずつが離れていて、それぞれがだしを含んでいる状態が理想だからです。スペイン人にとっての米は、粘らせずに味を含ませるもの。前提がそもそも違います。

産地と、栽培の背景

主な産地は、バレンシア周辺の水田地帯。地中海沿いの湿地を利用した稲作は、長い歴史を持つと言われています。

収量は多くありません。背が高く倒れやすい品種で、機械化との相性もよくない。ほかの品種に比べて手がかかる。だから価格も高くなります。原産地呼称のように、産地を保証する仕組みのもとで流通するものもあります。

同じ地域で作られる米にはカラスパラやセニアといった品種もあり、それぞれ性格が違う。ボンバだけが正解というわけではなく、作り手が仕上がりの好みで選び分けています。土地ごとに違うパンの姿と同じで、地域の主食には必ず選択肢があるのです。

炊き方の要点

ボンバの最大の長所は、吸水量の多さです。一般的な米より多くの液体を吸う。裏を返せば、だしの量を間違えると失敗します。

そしてもうひとつ。炊いているあいだ、混ぜない。日本の炊飯とは正反対の作法です。混ぜると粒の表面が壊れ、デンプンが出て粘りが生まれる。パエリアで避けたいのは、まさにそれ。

浅く広いパエリェラに薄く広げ、薪火にかけて動かさない。だしが引いていく音を聞きながら待つ。最後に鍋底でソカラットができれば、そこまでの加減が合っていた証拠です。

だしの質がそのまま味になります。カルドをしっかり取るところから料理が始まる。サフランの香りも、この吸水の過程で粒の内側まで入っていきます。

どんな料理に向くか

汁気を残すアロス・カルドソや、中間のとろみを持たせるアロス・メロソにも使われます。液体を吸っても崩れないという性質は、汁の多い料理でこそ効いてくる。

魚のだしだけで炊くアロス・ア・バンダのように、だしの味が主役になる料理とは特に相性がいい。米が味を運ぶ器になるからです。イカ墨で染めるアロス・ネグロでも、粒の輪郭が残るぶん、色の濃淡がきれいに出ます。

一方、米を使わないフィデウアのようにパスタで作る料理もある。何を使うかは、その土地の手に入るものが決めてきました。市場に並ぶものから料理が生まれる。順番はいつもそちらです。

合わせるワインは、だしの方向に合わせて選びます。魚介ならリアス・バイシャスの白、肉ならテンプラニーリョを主体にした赤。グラスの形まで気を配れば、香りの立ち方も変わります。

小さな粒の中で起きていること。それを知ると、米料理の見え方が少し変わります。ほかの話はコラム一覧から。