車で登っていくと、道の両側の斜面が赤褐色に光ります。石だけの山肌。作物が育つ土地には、まるで見えません。
プリオラート(Priorat)は、スペイン北東部カタルーニャ州の内陸に位置する赤ワインの銘醸地です。リオハと並び、スペインでわずか2つしかない最上級の原産地呼称「DOCa」に認定された、名実ともにトップクラスの産地。
ただし、ずっとそうだったわけではありません。かつては忘れられた寒村でした。それが1980〜90年代、情熱ある造り手たちがこの土地の可能性を見いだし、いまや世界の愛好家が競って求める産地へと生まれ変わった。石だらけの斜面が、資産に変わったのです。

産地の特徴 ― 粘板岩の急斜面
この産地のすべては、「リコレリャ」と呼ばれる赤褐色の粘板岩土壌から始まります。水はけがよく、養分は乏しい。ぶどうにとっては過酷な条件です。
ところが、追い詰められた木は下へ潜ります。水を求めて地中深くまで根を張り、結果として少量ながら極端に凝縮した果実を実らせる。豊かな土地では、こうはなりません。
さらに畑の多くは急峻な斜面。機械が入らず、手作業に頼るしかないため、生産量はごくわずか。手間と収量の割の悪さが、そのまま濃密さの代価になっています。原産地呼称が守っているのは、こういう不便さを含めた土地の条件です。
主要なぶどう品種
主役を務めるのは、ガルナッチャとカリニェナ(サムソ)という二つの黒ぶどう。どちらも派手な品種ではありません。しかしこの土地の古い樹齢の木から穫れると、凝縮感が跳ね上がり、力強い骨格を生みます。品種の実力というより、樹齢と土壌の仕事です。近年はカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーがブレンドされることもあります。ぶどうの出来はその年の天候にも左右されるため、ヴィンテージの違いが表情に出やすい産地でもあります。
味わい
グラスに注ぐと、まず色で押してきます。深く濃い色合い、熟した黒い果実、そして土壌から来る豊かなミネラル感。アルコール度数は高く、力強い。若いうちから飲めなくはありませんが、この構造は長い熟成に耐えるためのものです。クリアンサやレセルバの歳月を経て、力は複雑さへ姿を変えていきます。飲む温度によっても印象は変わるので、サーヴィスの温度は少し気にしたいところです。

最上級の格付け DOCa
スペインワインの原産地呼称の頂点にあるのが「DOCa(特選原産地呼称)」です。認定されている産地は、リオハとプリオラート。以上、二つだけ。
広いスペインで、この二つだけ。プリオラートの品質については、それだけ言えば足りるでしょう。
料理との相性
これだけ濃いワインには、こちらも引かない皿を。薪料理のように香ばしさをまとった肉、あるいは熟成したチーズ。熟成肉の焼き加減をミディアムレア寄りで止めた一枚なら、なおよく噛み合います。同じカタルーニャのテンプラニーリョ主体のワインと並べて飲み比べれば、この土地の異質さがいっそう際立つはずです。
痩せた土地が、いちばん濃いものを差し出す。プリオラートは、その理屈をグラスひとつで説明してしまいます。