夏の昼、日陰の温度計が上がりきったころ。地平線まで、低い樹形のぶどうが等間隔で並んでいます。木と木の間隔は広い。乾いた土地では、根が水を奪い合わないよう距離をとる必要があるからです。

ラ・マンチャとは、スペイン中央部、マドリードの南に広がる高原地帯のワイン産地のこと。ひとつの原産地呼称としては、国内でも最大級の面積を持ちます。

ただし「広い」という言葉だけでは、この土地の説明になりません。なぜ広くなれたのか。そこに、この産地の性格が表れています。

乾いた大地に広がるぶどう畑

ラ・マンチャとは

標高六百メートル前後の平坦な台地です。周囲を山に囲まれ、海の影響がほとんど届きません。

その結果、気候は極端になります。夏は乾いて暑く、冬は冷え込む。昼と夜の寒暖差も大きい。雨は少なく、空気は乾いています。人にとっては厳しい土地ですが、ぶどうにとっては悪い話ばかりではありません。

乾燥した空気は、病害を寄せつけない。だからぶどうは健全に育ちます。カスティーリャの素朴な食卓が生まれたのと同じ風土が、ここではワインを育てている。土地が、味を決める。

なぜこれほど広いのか

理由は単純です。ほかに作れるものが限られていたから。

保水力の乏しい土壌と少ない降雨。穀物には向かず、果樹も選択肢が狭い。そのなかでぶどうは、深く根を張って地中の水分を探し当てられる数少ない作物でした。同じ理屈でオリーブも広く植えられています。乾いた土地が、この二つを選んだ。

平坦であることも効いています。プリオラートのような急斜面の産地では、機械が入れず手作業に頼るしかない。ラ・マンチャは違います。平らな畑は作業効率がよく、面積を広げやすい。地形が、規模を決めました。

かつては、量を優先した時代もありました。安価なワインの供給地として知られた時期があります。けれど近年は、収量を抑えて凝縮感を狙う畑が増えている。同じ土地から、違う答えが出はじめています。

品種と味わい

白の主役は、アイレンという土着品種です。乾燥に強く、この台地に適応してきました。穏やかな酸と控えめな香りを持ち、軽やかな白に仕上がります。

赤ではテンプラニーリョが中心です。この土地ではセンシベルとも呼ばれます。強い日照を受けて育つため、果実味はよく熟し、色は濃い。ガルナッチャや、近年は国際品種も植えられています。

寒暖差の大きさは、味に効きます。昼に糖を蓄え、夜の冷え込みで酸を保つ。この繰り返しが、熟しているのに間延びしない味わいを作る。

樽で寝かせたものは、クリアンサやレセルバの表記を持ちます。時間をかけた一本は、価格帯を思えば驚くほど落ち着いた表情を見せることがある。格付けの枠組みを手がかりにすると、その差が読み取れます。

料理との相性

このあたりの食卓は、飾り気がありません。羊のミルクから作るマンチェゴチーズは、まさにこの土地の名を冠したチーズです。熟成したものと、樽を経た赤。長く隣り合ってきた組み合わせです。

赤なら、煮込みによく寄り添います。ひよこ豆を使った煮込みや、コシードのような時間をかけた一皿。チョリソーモルシージャといった腸詰めの塩気とも、無理なくつながります。

薪火で焼いた肉にも合います。凝縮した果実味は、熟成肉の脂を受け止めるだけの厚みがある。仔羊のローストなら、内陸の羊とこの土地の赤という、産地の重なりも味方します。

軽やかな白は、トルティージャアセイトゥナスのような、気負わない一皿の隣に置きたい。ペアリングは、同じ土地のもの同士から考えると外しにくい。当店でも、価格と中身の釣り合いを見るときに立ち返る産地のひとつです。ほかのワインの話はコラム一覧からどうぞ。