「食材はすべてスペインから?」と聞かれることがあります。
答えは、いいえ。運ぶべきものと、運ばなくていいものがある——そう考えています。
運ぶべきもの
現地から取り寄せるのは、その土地でしか作れないものです。
オリーブオイル。 スペイン料理の骨格を作る要素で、これは代替が効きません。品種と搾り方で香りがまるで違い、料理の方向性を決めてしまいます。
イベリコ豚の生ハムや加工品。 どんぐりを食べて育つ独特の飼育環境が味を作っています。これは風土そのものが原料です。
パプリカパウダーやサフランなどの香辛料。 産地の乾燥度合いと日照が香りを決めます。同じ名前でも、産地が違えば別物になります。
チーズや保存食品。 熟成の文化と結びついたもので、現地の環境で作られたものにしか出せない性格があります。
そしてワイン。 言うまでもなく、土地が味そのものです。
これらに共通するのは、時間をかけて作られ、運んでも劣化しにくいという性質です。だから輸送に耐えます。

運ばなくていいもの
一方で、鮮度が命のものを運ぶ意味はありません。
魚介、野菜、多くの肉。これらを地球の反対側から運べば、鮮度は必ず落ちます。冷凍や真空で状態を保つ技術はありますが、獲れたてには及ばない。
だから Opus 6 では、**この土地で手に入る季節の素材**を使います。瀬戸内や日本海の魚、近隣で採れる野菜、国産の肉。
これは妥協ではありません。むしろスペインの流儀に忠実であろうとした結果です。
土地に正直であること
スペインを巡って学んだことのなかで、いちばん大きかったのがこれでした。
どの地方も、その土地の条件に正直だった。海が近ければ魚を、牧草地があれば肉を。遠くから運ぶ発想がそもそもない。あるものを最良の形で使う——それが彼らのやり方です。
その姿勢をそのまま持ち込むなら、日本で店をやる者が取るべき行動は明らかです。日本の食材を使うこと。スペインの料理人がこの土地にいたら、間違いなくそうするはずだからです。
だから輸入するのは、現地でしか作れない骨格の部分だけ。あとはこの土地から集めます。
火が、両者をつなぐ
日本の食材とスペインの調味料。この二つを結びつけるのが、薪火です。
火の入れ方はスペインで学んだものを使います。燻香のまとわせ方、熾火の使い分け、休ませる時間。技法は現地のまま、素材はこの土地のもの。
そこに現地から運んだオリーブオイルと塩が加わって、ようやく一皿になります。
仕入れは、毎日変わります
季節が動けば、素材も変わります。同じ月でも、その日の入荷で組み立てが変わる。
おまかせのコースにしているのは、この変動を前提にしているからです。あらかじめ決めたメニューを守るより、その日いちばん良いものを使うほうが、料理としては正しい。
芦屋・苦楽園の坂の途中で、今日届いたものを焼いています。