包み紙をひねって開け、指でつまむ。持ち上げた瞬間に、角が落ちました。口に入れると、噛む前に崩れる。舌の上で乾いた粉に戻り、そのまま溶けていきます。

ポルボロン(Polvorones)とは、スペインのクリスマス時期に食べられる焼き菓子。名前は「粉」を意味する polvo に由来します。小麦粉をあらかじめ焙煎し、ラードと砂糖、アーモンド粉を混ぜて焼く。まとまらないほど脆い食感が、この菓子の本体です。

崩れやすさは欠点ではありません。それを目指して作られています。

アーモンドを砕いた菓子の材料

ポルボロンとは

主な材料は、小麦粉、ラード、砂糖、アーモンド粉。シナモンやレモンの皮、ゴマなどで香りをつけることもあります。

似た菓子に「マンテカード」があり、両者は混同されがちです。おおまかには、アーモンドの比率が高く、より崩れやすいものをポルボロンと呼ぶことが多いようですが、地域や作り手によって呼び分けは一定していません。

いずれにせよ、共通するのはラードを使うこと。バターではなく豚の脂です。パンセタイベリコ豚の国らしい選択で、マヨルカのエンサイマーダもまたラードを使う菓子。豚の脂は、スペイン菓子の裏方として広く働いています。

小麦粉を焙煎する意味

この菓子の要は、粉をあらかじめ乾煎りすることにあります。

小麦粉は、水と混ぜて捏ねるとグルテンという網目状のタンパク質を形成します。パンの弾力も、麺のコシも、この網目のおかげ。ところがポルボロンは、その網目を作りたくない。

そこで粉を先に加熱します。焙煎した粉は水を吸いにくく、グルテンが形成されにくい。さらにラードの油分が粉粒をコーティングして、粒同士がつながるのを妨げます。二重の妨害。結果、焼き上がってもまとまらず、触れれば崩れる生地になる。

同じ小麦粉でも、土地ごとに違うスペインパンは網目を育てて焼くもの。小さく硬いピコスも、しっかり結着させたパンです。まったく逆の方向へ小麦粉を使っている。焙煎した粉には香ばしさも加わり、ナッツのような風味が下地になります。

クリスマスの菓子として

ポルボロンが並ぶのは、主に12月。トゥロンと並ぶ、クリスマスの定番菓子です。

一つずつ紙にひねり包むのが伝統的な包装。これは崩れる菓子を運ぶための実用でもあり、同時に贈り物としての体裁でもあります。箱を開けると、色とりどりの包み紙が並ぶ。

スペインのクリスマスの食卓は、子豚の丸焼き仔羊のローストといった重い料理が中心。そのあとに、コーヒーとともに小さな乾き菓子を少しずつ。年明けには公現祭のロスコンが控えていて、祝祭の菓子は暦に沿って入れ替わります。

産地としては、アンダルシア地方の内陸部が名高い。太陽が育てたアンダルシアの食文化は、サルモレホのような冷たい料理で知られますが、乾いた焼き菓子もまたこの土地の産物です。

「口の中で言えるか」という遊び

ポルボロンには、ひとつ有名な言い伝えがあります。ひと口で食べて、崩れる前に「ポルボロン」と言い切れるか、という遊び。

口の中の水分をすべて奪う菓子ですから、実際にはかなり難しい。この難しさが遊びとして成立するほど、乾いている。菓子の性質そのものが、文化として遊ばれているわけです。

食べる際は、飲み物が要ります。ベルモットのような食前酒よりも、この場合は温かいものか、甘い酒がいい。

合わせる一杯

定番は、甘口のシェリーやモスカテル。乾いた菓子に、液体の甘さが染みる。アーモンドと熟成酒は香りの相性がよく、これはタルタ・デ・サンティアゴにも言えることです。

コーヒーやホットチョコレートも合います。チュロスをチョコラーテに浸す習慣がある土地ですから、乾いた菓子を濃い飲み物で流す発想は自然。

食後酒として、樽熟成の効いたクリアンサのような赤を少量というのも考えられます。温度を少し高めに整えると、香りが立って菓子と噛み合う。

崩れることを設計する。ほかの菓子の話は、ポストレの流儀コラム一覧からどうぞ。