家族での食事には、独特の難しさがあります。
世代が違えば、食べる量も、好みも、食事の速度も違う。祖父母には多すぎ、子どもには馴染みがなく、誰かひとりが我慢する——そういう夜になりがちです。
スペイン料理には、この問題を和らげる性質があります。分け合うことを前提にした料理だからです。
大皿を囲む、という文化
スペインの食卓を思い浮かべると、真ん中に大きな皿があります。
ラシオン——数人で分ける大皿の盛り。パエリアも、本来は大きな鍋を囲んで各自が取り分けるものです。一人一皿で完結する料理ではなく、卓の中央に置いて手を伸ばす料理。
この形式には、家族向きの利点があります。各自が自分の量を決められること。よく食べる人は多く取り、少食の人は少しでいい。誰も無理をせずに済みます。
そして取り分けるという動作そのものが、会話を生みます。「これ食べた?」「もう少しいる?」——手が動くと、口も動く。黙って自分の皿を食べる食事より、卓が賑やかになります。

世代を越えやすい味
スペイン料理は、香辛料で複雑に組み立てる料理ではありません。
基本は、素材と、オリーブオイルと、塩と、火。オリーブオイルの風味と、にんにくの香ばしさ、そして炭や薪の火が入った香り。構造がはっきりしているぶん、年齢を問わず理解しやすい味になります。
辛さで押す料理でもないので、辛いものが苦手な方でも食べられます。ご高齢の方にとっても、若い方にとっても、極端な負担がない。
薪火で焼いた料理は、噛みしめると素材の味が出てくる種類の美味しさです。派手さで驚かせるのではなく、じわじわ効いてくる。世代の違う人たちが同じ皿を「おいしいね」と言える確率は、こういう料理のほうが高いと感じています。
記念日を、家族で
家族の記念日は、いくつもあります。
誰かの誕生日、進学や就職、退職、長寿のお祝い。あるいは特別な理由がなくても、久しぶりに全員が揃った日。そういう夜こそ、外で食べる意味があります。
家で祝うと、必ず誰かが台所に立つことになる。準備する人、片づける人が生まれ、その人だけが座れない。外で食べれば、全員が同じ側に座れます。
記念日の夜の過ごし方でも触れましたが、祝うとは時間をかけることです。急がずに、順に出てくる皿を待ちながら話す。その時間を、家族全員に等しく配れるのが外食の良さだと思っています。
ご予約のときに
家族でのご来店では、事前にお知らせいただきたいことがあります。
人数と、年齢の構成。 ご高齢の方や小さなお子様がいらっしゃる場合、席の配置や料理の出し方を調整できます。
苦手なもの・アレルギー。 人数が増えるほど、これは重要になります。全員分を事前にうかがえれば、当日どなたも困りません。
時間の使い方。 長くゆっくり過ごしたいのか、ある程度の時間で切り上げたいのか。ペースを合わせてお出しします。
お子様連れでのご来店については、ご予約時にお申しつけください。ご希望に応じて、できるかぎりの対応を考えます。
芦屋からもほど近い苦楽園の坂の途中で、ご家族の夜をお待ちしています。