結婚記念日は、年を追うごとに祝いにくくなります。
最初の数年は自然に祝えても、十年、二十年と経つと「今さら」という気持ちが混じる。予定を合わせるのも面倒になり、いつのまにか通り過ぎている——よく聞く話です。
続けられる形にする
祝い方を大げさにすると、続きません。
準備に手間がかかり、費用もかさむ形式は、数年で途絶えます。逆に毎年同じように繰り返せる形を見つけた夫婦は、長く続けています。
外で食事をする、というのはその点で優れています。準備が要らず、片づけも要らない。予約を入れて、店に行き、座る。それだけで成立します。
家で祝おうとすると、必ずどちらかが台所に立つ。作る人と食べる人に分かれてしまう。外なら、二人とも同じ側に座れます。

話すことがない、という夜も
長い付き合いになると、報告すべき新しい出来事は減ります。
「話すことがない」——それは関係が悪いのではなく、すでに共有が済んでいるということです。けれど向かい合って座ると、その事実が急に気まずく感じられることがある。
薪火の店には、その気まずさを引き受ける仕掛けがあります。炎です。
黙っていても、二人とも火を見ていられる。会話が途切れても、間が持つ。そして数分後、どちらかが思い出したように話し始める。デートの夜でも書きましたが、この効果は付き合いが長いほどありがたいものです。
一皿ずつ、時間をかけて
おまかせのコースは、順に出てきます。
薪火の料理は火の入り方を待つため、皿と皿のあいだに間があります。急かされない。その待ち時間に、去年の話をしたり、しなかったりする。
祝うとは、時間をかけることだと思っています。豪華さではなく、その夜に二人で使った時間の長さが、記念日を記念日にします。
ワインをグラスで少しずつ変えていくのも、時間の使い方としておすすめです。「去年飲んだのはどれだったか」——そんな会話が、翌年の楽しみになります。
毎年、同じ店で
同じ店に毎年通うと、面白いことが起こります。
去年との差が見えるようになるのです。季節の食材は年ごとに出来が違い、同じ月でも同じ皿にはなりません。その違いに気づけるようになると、それ自体が二人の記録になります。
「一昨年のあれが良かった」「今年のほうが好き」——そういう比較ができるのは、続けた人だけの特権です。
ご予約のときに
結婚記念日である旨をお伝えください。 何年目かも教えていただけると、締めくくり方を寄せられます。
サプライズをお考えの場合は、事前のご相談が確実です。当日の思いつきでは、できることが限られてしまいます。
芦屋からもほど近い苦楽園の坂の途中で、今年の一夜をお待ちしています。来年もまた、同じ場所で。